2010-01-01から1年間の記事一覧

日本代表についての覚書@6/30

120分戦って0-0のままPK戦へ。 3-5でパラグアイが勝ちました。日本は、ガチャピン・長谷部とゴールを決め3人目のキッカー駒野がゴールバーに当て外しました。パラグアイのキッカーは非常に落ち着いており、川島の神風セーブもここでは発揮されませんでした…

ジョージ・オーウェル 『1984年』

君はきれいな模様のなかの疵なのだよ、ウィンストン。拭い去らなくてはならない汚点なのだ。今しがた言ったばかりだろう、われわれは先人たちの轍は踏まないと。不承々々の服従には満足しないし、ひたすら平身低頭してこちらの言いなりになる態度にも満足し…

日本代表についての覚書@6/28

ドイツvsイングランドは4‐1でドイツの大勝に幕を閉じました〓後半イングランドの崩壊っぷりと、ドイツのパスワークの素晴らしさに圧巻〓朝にはアルゼンチンが勝ち抜けていることでしょう〓日本が復調したのは中村が出なくなったからだと言われていますが、…

視線の悲劇 マノエル・ド・オリヴェイラ『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)

愛するもの同士が見つめあうまでは、いかなる人物も見詰め合ってはいけない。 まさかこんな緘口令が敷かれたわけでもあるまいが、リスボンから出発した列車で車掌が切符を黙々と切り続ける長いシーンで始まる『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)では…

フットボールへようこそ

いまヴェルディが熱い!経営危機などもソーですが、フットボールとしてもかなりアツイです〓 高木俊幸をはじめとした高木三兄弟の活躍に、気付けばJ2で5位(3位までが昇格)につけ、再来週14日には4位のジェフ千葉と直接対決〓〓〓3位アビスパ福岡とのカ…

『童貞』とはなにか

けいおん!映画かもそうですがCD発売を今か今かと待ち望んでいる唯です。童貞が表す性質とは何か?これは難しくKJにとっては重要な問題でございますね。 ルサンチマンやモラトリアムという言葉は、『性質』の一端は表しますがそれ自体ではないという理解を僕…

消滅の技法 トーマス・アルスラン『売人』(1999)

「抑制が効いている」という標語は、映画評の文言として出てくると、途端に「退屈」の同義語として受け取られてしまう。なぜなら、そこにはアクションを助長するような心情的意味づけも、心理的意味づけを助長するようなしぐさもないからだ。しかし、このも…

白い西荻

後藤へこのメールをもって、私の西荻会主催者として最後の仕事とする。 まず、西荻会継続のために、誓に西荻窪への移住をお願いしたい。以下に、西荻散策についての愚見を述べる。 西荻窪を歩く際、第一選択はあくまでシタールの女の子であるという考えは今…

ふたつの時間  テオ・アンゲロプロス『霧の中の風景』(1988)

男の子よりも、ずっと早く女の子は成長する。 物事にはなににつけ、知るまでに要する時間というものがある。 このありふれたふたつの命題に息を吹き込んだ映画として、『霧の中の風景』(1988)は記憶され続けることだろう。実際のところ、このふたつの…

(その三十三) 芳子某

「あんた、北海道でバスガイドやるための秘訣ってわかる?」 芳子はかつて職場の先輩の花江に、そう聞かれたことがある。まじめなことがとりえで、自分でもそう思っている人間特有の鼻持ちならない愚鈍さをのぞけば、仕事もてきぱきとこなす芳子は、語尾が心…

夏目漱石『続・軽音』

月日のたつのは早いもので、私たちもとうとう三年生になってしまった。軽音楽部の同級生がみな同じ学級だというので、これは何かあるなと思っていると案の定、マドンナが担任であった。何にせよ、かれらと同じ学級になれば便利には相違ない。宿題の写しも頼…

夏目漱石『軽音』

生まれつきの天然でゴロゴロしてばかりいる。小学校の時分、調理実習で蛸焼きを作る際、蛸を忘れたことがある。同級生の和が恨めしそうに見るので、蛸なしでもおいしいねと言ってやった。おやじと母はやたら海外に出かける。年頃の娘を置いて海外旅行もない…

それはちがう

思想がバイアスなんじゃない。 認識それ自体がバイアスなんだよ。

電話にて

Kから二週間おきに電話があった。私の携帯電話は、着信音が四回鳴ると、留守番電話サービスに接続される。日ごろ顔を合わせていない相手や、仕事上のやり取り以外の電話には、この四度の着信音の範囲内ではどうしても出る気にならなかった。だから地元のK…

言語で処理する自分自身

話をしながら、自分の会話をラフにスケッチするのだ。ちょうど彫刻家の粘土像のように。話し言葉は可塑的で、どんなふうにも出来る。 叩いたり、なだめたり、延ばしたり。ぼかし、こすり出し、盛りつけて、継ぎ足す。それがとても簡単にできるのは、ソフトな…

サルビアの向こう側で マノエル・ド・オリヴェイラ『過去と現在、昔の恋、今の恋』(1972)

もはやあまりに定番すぎて、それが何を表す曲かはだれもがみな当然のように知っているとうなずきあいながら、いざ曲名を問われると不審なことに肝心の題名が出てこず、あれよあれあなた知ってるでしょと耳打ちしあい、ときには擬音でパパパパーンと恥ずかし…

(その三十二) ダヴィデ・マリア・トゥロルド

今日、ダヴィデ・マリア・トゥロルドは、大手出版社のモンダドーリなどから詩集の出る、彼なりの読者層にささえられた詩人である。彼の詩は、語彙としてはレオパルディの抒情詩に、また形式的には初期のウンガレッティにつよく影響されていて、それが本人に…

(その三十一) J

私の知り合いで「借金の天才」「借金踏み倒し王」と呼ばれているJという男がいる。「金を借りるということは、もらったということだ」と常日頃から公言している奴で、現にこれまで三十億円ほど借金しているが、一銭たりとも返したことがない。それでいて、…

(その三十) ベルトルト・ブレヒト

学校では紋切型の教師たちに飽き足らず、学業を怠け、両親と先生を悩ました。当然の結果として、進級がむつかしくなったこともある。当時の同級生で後に医者になったオットー・ミュラー(ブレヒトはミュラー=アイゼルトと呼んでいた)の回想するところを信…

電車にて

「どっちかっていうと、詩人になりたい」と、私に告げた女がいた。驚くほど無愛想な女で、その続きを聞くことをためらい、どうしてそんなひと言が飛び出してきたのか忘れてしまった。いつもだらしなく口を開けている女で、耳をあてて近づいてみると、どんな…

感情に含まれた、想像されたもの。恐怖。

かつて師は、弟子の陳情に答えてこう言った。あなたは、人生のあらゆる場面に忍び込む恐怖をなんとか克服する方法を知りたいと言った。まず、恐怖を克服するためには、それに打ち勝たなければならない。恐怖に屈してなお克服することはできないのだから。し…

(その二十九) グロリア

グロリアにとっては、私は庭のようなものだ。草取りをしたり、剪定したり、結んだり、しぼんだ花を取り除いたり、アリマキを退治したりする必要がある。ときどき私がフォークを右に、ナイフとスプーンを左にセットすると、もう何十年もやっているのにどうし…

(その二十八) 二葉亭四迷

私が二葉亭を珍重おかないのは、彼が矛盾と撞着に満ちた人だからである。空想家でありながら、空想家でないと言いはってきかない人だからである。 文学は男子一生の事業でないと彼は口で言うばかりか本気で思って、国事に奔走するのが男子の本懐だと信じてい…

文したため候

拝啓。連日の猛暑も一息ついた今日この頃いかがお過しでしょうか。 私がこの文面をしたためている喫茶店では、幾多のカップルが浮世離れした様相で言葉を交わしあっております。なかでも左手に座っている男女などは、はたしていつから座っているのか、氷の溶…

変革ハムレット

集団における単純な情報伝達は読み手・受け手に義務ないし責任がなくては機能しない。 その意味で内容を見たくなるような詳報伝達の構成・デザインの工夫は必要だろう。もちろん対象自体に興味が向いてれば、シンプルな情報伝達でも読み手から積極的にアプロ…

(その二十七) アリス

女は彼に新しいネクタイを買うと、本人の気に入ろうが入るまいが、それを締めさせたがるタイプだ。それなのに、こっちが花束を持って行ってやると、色がどうのこうのと文句を言うのが気にくわない。何も花を身につけてくれってわけじゃないのだ。 アラン・シ…

(その十) 胸の高鳴り

彼がことを台なしにしてしまうのではないか心配だった。もしそんなことにでもなったら、一大事だ。それから窓をしめてカーテンを引いたほうがよかろうと思いついた。たてつづけに煙草をふかした。時計はまだ十一時十五分。あることを考えつくと、彼の胸は早…

梁塵秘抄

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん、遊ぶ子供の声聞けば、我が身さへこそ動がるれ

(その二十六) サマセット・モーム

私は彼がじっさいはかなり暗い人間で、淋しがりやではないかと思っています。彼が七十歳の誕生日についてしるした文章はかなり陰気なものです。私が察するところ、彼はあらゆる意味で淋しい人生を送ってきていて、人間に感情的な興味はあまりないという態度…

(その九) 見栄とつつましさ

マクヒィス おい、可愛らしい下着じゃねえか。 淫売 揺り籠から棺おけまで、まず下着だあね。 年とった淫売 あたいは絹はいっさい使わないことにしてんの。お客がじきに病気だと思いやがるからね。 ベルトルト・ブレヒト『三文オペラ』千田是也訳 岩波書店88頁