2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

(その百五)バディ・ホールデン

彼があまりにしなさすぎたことは眠ること、あまりにしすぎたことは飲酒で、多くの人が彼の後の発狂を、才能が誘惑に負けて堕落する教訓劇として解釈していた。しかし、この頃の彼の生活は、一日の時間を繊細に割りふることで健全で微妙なバランスを保ってい…

(その四十九)編集

(O=マイケル・オンダーチェ、M=ウォルター・マーチ ――引用者注) O あなたの実践的な映像編集方法について、もっと教えていただけますか。 M ショットをつなげてシーンを組み上げるという作業は、三つの重要な選択の連続なんだ。三つの選択とは、「ど…

(その百四)パット・ギャレット

パット・ギャレット、理想的な人殺し。公的な人物、医師の心。かれの手は毛深く、傷あとがあり、ロープで痛めつけられていて、手首に生涯消えないむらさきの痣があった。理想的な人殺しであるのはかれの心がひがんでいなかったからだ。通りでだれかを殺して…

(その六)若い芸術家

立ちどまると一面の星空とカエルたちのコーラス。やっとさがしあてた家のあたたかい電灯の光の下で、谷川俊太郎と武満徹がビリー・ザ・キッドのピストルのはなしをしていた。石原慎太郎は輪ゴムのパチンコでハエをうちおとしていた。影の方にまだ何人かいた…

(その百三)ヤニス・クセナキス

ヤニス・クセナキスは一九二二年にブライラ(ルーマニア)に生まれた。一九三二年に両親の祖国ギリシャにかえり、スペツァイ島のギリシャ・イギリス学園にはいる。十二歳のとき音楽をこころざす。一九四〇年宛ね工科大学にはいり、同時に抵抗運動にくわわる…