2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

(その百三十四)花井お梅

毒婦花井お梅。美貌と気っ風の良さで知られたお梅は、芸妓として名を挙げ、浜町2丁目に待合茶屋「酔月楼」を開いた。茶屋の名義鑑札人である父親の花井専之助は、士族の商法を地で行く下級武士で、縁故も商才もないまま放漫経営をつづけた。お梅は大げんか…

(その五十九)空襲警報

四月十八日、土曜日。 授業は終ったが、すぐに家に帰る気にはならない。ランドセルを放り出して、校庭の隅のジャングルジムに登った。隅田川を上下する舟がよく見えた。 大川の向うで、間の抜けたサイレンが鳴った。本所あたりの工場の昼休みだろう。何かの…

(前編)だれもだまされてはいない 松本人志『R100』(2013)

『R100』(2013)は映画である。だから、われわれは決してだれもだまされてはいない。 「ビジュアルバム」や「寸止め海峡」の世界観を映画館で再体験できるという期待に胸を膨らませ、先の三度の裏切りにも関わらず未だに諦めきれない「松本信者」特…

(その五十八)改心

宝永六年版『今様二十四孝』の記事。傾城狂いがもとで兄の身代をつぶした男の話。傾城狂いに走った重右衛門は、兄の財産を蕩尽すると、そのまま行方をくらました。心を入れ替えるつもりで江戸の商家で数年の研鑽をつみ、詫びを入れるつもりで兄の家に出向く…