2010-09-28から1日間の記事一覧

電話にて

Kから二週間おきに電話があった。私の携帯電話は、着信音が四回鳴ると、留守番電話サービスに接続される。日ごろ顔を合わせていない相手や、仕事上のやり取り以外の電話には、この四度の着信音の範囲内ではどうしても出る気にならなかった。だから地元のK…

言語で処理する自分自身

話をしながら、自分の会話をラフにスケッチするのだ。ちょうど彫刻家の粘土像のように。話し言葉は可塑的で、どんなふうにも出来る。 叩いたり、なだめたり、延ばしたり。ぼかし、こすり出し、盛りつけて、継ぎ足す。それがとても簡単にできるのは、ソフトな…

サルビアの向こう側で マノエル・ド・オリヴェイラ『過去と現在、昔の恋、今の恋』(1972)

もはやあまりに定番すぎて、それが何を表す曲かはだれもがみな当然のように知っているとうなずきあいながら、いざ曲名を問われると不審なことに肝心の題名が出てこず、あれよあれあなた知ってるでしょと耳打ちしあい、ときには擬音でパパパパーンと恥ずかし…

(その三十二) ダヴィデ・マリア・トゥロルド

今日、ダヴィデ・マリア・トゥロルドは、大手出版社のモンダドーリなどから詩集の出る、彼なりの読者層にささえられた詩人である。彼の詩は、語彙としてはレオパルディの抒情詩に、また形式的には初期のウンガレッティにつよく影響されていて、それが本人に…