(その二十七) アリス

女は彼に新しいネクタイを買うと、本人の気に入ろうが入るまいが、それを締めさせたがるタイプだ。それなのに、こっちが花束を持って行ってやると、色がどうのこうのと文句を言うのが気にくわない。何も花を身につけてくれってわけじゃないのだ。
      アラン・シリトー「名もなく街に」(『悪魔の暦』所収)河野一郎訳 集英社46頁