(その五十八)改心

宝永六年版『今様二十四孝』の記事。傾城狂いがもとで兄の身代をつぶした男の話。傾城狂いに走った重右衛門は、兄の財産を蕩尽すると、そのまま行方をくらました。心を入れ替えるつもりで江戸の商家で数年の研鑽をつみ、詫びを入れるつもりで兄の家に出向くが、兄はすでに他界していた。嫂と母はいずこかへ去ったという。その後、宮川町で昔の血が騒ぎ、夜鷹と馴れ初める。これを伴侶と思い定めた重右衛門が意を伝えると、女は浮かれた寝物語のつづきに真実を話すのは無精とはいえ、自分には義母がひとりいる、と伝える。つつがなく面倒を見ると誓文をしたため、手を引かれるまま招かれた六波羅の借家にいたのは自分の母で、よくみると、松の根元でしとねをともにしたのは女は兄の後家であった。
『今様二十四孝』ではこの話を美談として扱っている。たしかに、孝行が残酷でないなどといった規定は存在しない。