2012-12-11から1日間の記事一覧

(その三十三)合図

次の日午後早く、列車をおりたときは、サン・ディエゴの町は、陽気にゴッタがえしていた――国境向うの、競馬シーズン最初の土曜日に引きよせられた連中で、いっぱいだった。ロス・アンジェルスの映画屋、インペリアル・ヴァレリーの百姓、太平洋艦隊の水兵、…

(その三十二)録音

入所当初は何がタブーかもわからなかったから、僕は無茶なことをして皆を驚かせた。そんなジェイルの手紙のやりとりでこんなエピソードがある。 当初僕は英語の授業を率先して受けていて、その際に先生が僕1人で宿題ができるようにと、ポータブル・カセット…

(その九十九)森崎偏陸

スクリーンのまえで、バスター・キートンはそこに境などないかのように軽々と跳び越え、ジャン=リュック・ゴダールはその手前で絶望的な欲情にふけらせた。スクリーンのてまえで現実と想像がせき止められる(越えられる)瞬間を描く欲望は、いつでも映画を…