(その十八) 感動

 ヴェルフェル(カフカより七歳年少の早熟詩人。当時まだプラーク大学の学生だった)の詩のせいで、ぼくの頭は、きのうの午前中ずっとまるで蒸気でいっぱいになったような具合だった。一瞬ぼくは、感動がぼくをさらってまっすぐ無意味の底まで連れて行きはしないかと心配した。
            フランツ・カフカカフカ全集7 日記(一九一一年十月十九日の記述)』谷口茂訳 新潮社 一九八一年十月二十日発行 147頁