(その十六) 握手

 ゆうべ、ぼくはマリーエン小路のぼくの義姉妹に、同時に両手で握手した。まるでそれが二つとも右手で、そしてぼくが二重人格であるかのように器用に。
           フランツ・カフカカフカ全集7 日記(一九一一年一〇月十九日の記述)』谷口茂訳 新潮社 一九八一年一〇月二〇日発行 81頁