2010-08-22から1日間の記事一覧

それぞれの背中  小津安二郎 『東京暮色』(1957)

女が宿命的にかかえる不幸は、結婚という行事によって分断される。結婚するまえには結婚するまえの不幸が存在し、結婚したあとには結婚したあとの不幸が存在する。このいたって単純な法則が支配する小津安二郎の後期の作品『東京暮色』(1957)には、も…

路上にて

スーパーマーケットに行った帰りの道で、路上に倒れている自転車があった。よく見ると、自転車には老婆がまたがっていた。サドルに座り走っていたそのままの姿勢で、そっくり九十度転倒したかっこうだった。夜の七時を過ぎたところで、他に人通りはなかった…