(その三十) 慣れ

「そんなことだろうと思ってたよ」と期待してた表情も見せず、にんじんはそっけなく答える。
 にんじんはそれに慣れている。ある事柄に慣れると、それがついにはちっとも可笑しくはなくなるのだ。

ジュール・ルナール「にんじん」 佃裕文訳(『ジュール・ルナール全集』第三巻 臨川書店 一九九五年七月三〇日発行 八六頁)