(その六十二) 秋田義一

 とやかく評判するものもあるが秋田義一は一風変った人物だった。
 いやなことは聞かないふりをするというので、勝手つんぼという綽名もあり、また、耳シェンコとも言った。盲目のエロシェンコをもじったのだが、確かそれはサトウ・ハチロー命名だったようだ。命名やゴシップにかけては、子供ながらハチローは天才だった。
      金子光晴『詩人 金子光晴自伝』(『ちくま日本文学全集 金子光晴』所収)筑摩書房 一九九一年六月二〇日発行 324〜325頁