(その二十二) 孤独

 一晩じゅうぼくはひとりでいた、そしてもう一晩そうして過ごさねばならないのかと思うとぼくの勇気はくじけた。ときどき、暗闇のなかで、ぼくはあらぬことを口走った。枕をしっかりと抱きしめて何か言った。そのとき考えたことは、もう何度も考えてしまったことばかりだったので、まるで家の階段みたいだった。
 翌日は、一日じゅうひとりで歩きまわったが、いつまでたっても夕方にならなかった。雨が降りはじめ、それが霙まじりになった、そしてぼくは思った。ミラノにも雨が降っているだろうか。マスケリーノに行くしかなかった。あそこに行けば誰かに会える、カルレットか、常連の誰かに、そう思うといまではぼくの気持は安まった。あそこで夜が過ごせるかと思うとぼくの気持はなごんだ。そしてそこへ行く時間を少しずつ引き延ばした。あの最後の晩には、それ以上ひとりでいないことによって、何かが失われるような気がした。
       チェーザレパヴェーゼ『青春の絆――パヴェーゼ全集5』河島英昭訳 晶文社 一九七五年四月三〇日発行 124頁