2011-06-09から1日間の記事一覧

(その二十九) バス移動

新宿駅西口を午前九時に出発したバスは、関越道を降りてからずっと、同じような景色の続く国道をひた走っている。僕はバスの中を見回した。三十人ほどの若者が、それぞれ窓際の席に陣取り、眠ったり、ヘッドフォンステレオを聴いたりしている。友達同士で参…

(その二十八) 出会い

「ちょっと裸になれ」と、力道山が言った。それが彼の最初の言葉だった。 アントニオ猪木『男の帝王学』ワニブックス 一九九〇年六月一日 103頁 十三歳でブラジルに渡った頃の猪木寛至は、すでに身長が一八五センチを越え、学校の体育教師を投げ飛ばすほどの…