2011-03-30から1日間の記事一覧

(その六十九) 佐伯米子

一九二三年の秋、渡航のために新橋にある米子の実家に預けていた荷物が震災で焼けだされた直後は、とうぶんのあいだは東京で不便をしのんでいるしかないと相談しあったものだった。多くの知人を亡くした。運よく住まいを失わなかったものもいたが、友人の何…

(その六十八) ベイヤード・サートリス

それからまた、そうした戦争帰還者の中に、ベイヤード・サートリスがいた。彼は一九一九年の春帰ってきて、見つけることのできる一番速い自動車を買い入れ、郡じゅうを乗り廻したり、メンフィスへいったりきたりして暮らしていたが、(われわれはだれもそう…