仕草見本市

(その三) 震え

君はいくつだね ぼくはふるえだした。ぼくの手は手摺りのうえにおかれていたがもしその手をかくしたらかくしたわけが彼にわかってしまうだろうとおもった(ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』尾上政次訳 富山房282頁)

(その二) 向く

「そうね。……あなたには、あたしのほうを向くとき、いつでもすこし途方に暮れたようなところがある。自分自身からすこし後ろへさがって、なんとなく稀薄な、その分だけやさしい感じになって、こっちを見ている。それから急にまとわりついてくる。それでいて…

(その一) 思案

Iは、こぶしを握り、ほほにあて、小指を立てて唇で噛んだ。与えられた圧力によって、首はかしげられ、視線は虚空に向けられた。男はそのようにして短く思案した。(出典:夢)